生命保険金は特別受益でしょうか

被相続人(故人)が契約していた生命保険につき、相続人のうちの一人が保険金の受取人に指定されている場合があります。

例えば、
父が亡くなり、子2人(長男・次男)が相続人となりました。
父の遺産は現金5000万円でしたが、長男は、父が掛けていた生命保険の受取人に指定されており、保険金として400万円の支払いを受けました。

この場合、遺産の5000万円は、2分の1ずつ(2500万円ずつ)分与すべきでしょうか。

次男としては、長男はすでに400万円の支払いを受けているのだから、「長男:2300万円、次男:2700万円」とするのが公平だと思うかもしれません。

このような次男の主張が、「特別受益」「持戻し」と呼ばれるものです。
長男に支払われた保険金400万円を遺産に加えて、5400万円を2分の1ずつ分与すべきという考えです。

しかしながら、判例・実務は、このように考えません。

生命保険金は、受取人(この場合は長男)の固有の権利であって、原則として特別受益に該当しないと考えているのです。

したがって、遺産の5000万円は2500万円ずつ分けることになります。

「原則として」と書きましたのは、例外があるからです。

保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率など、諸般の事情を総合考慮した結果、持戻しがなされる場合があります。

例えば、東京高裁の平成17年10月27日決定は、遺産総額が約1億円、保険金の総額も約1億円という事案について、持戻しの対象になると判断しています。

相続問題、遺産分割についてのご相談は、石川県金沢市の弁護士、棒田法律事務所にご相談下さい。

遺言書の保管制度

相続法改正により、自筆で書いた遺言書を法務局で保管してもらうことができるという制度が、2020年(令和2年)7月10日からスタートします。

私はこれまで「遺言書を作成したい」というご相談については、できれば公正証書遺言で作成されることをお勧めしてきました。

その理由の一つが「検認が不要であること」です。

自筆で書かれた遺言書については、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所で遺言書の検認を行わなければなりませんでした。相続人を調査し、家庭裁判所に申立てを行って・・・という手順を踏まなければなりません。
これに対して、公正証書で作成された遺言については、検認が不要で、直ちに相続登記などを行うことができます。

ところが、今回の相続法改正により登場した遺言書保管制度では、法務局に保管してもらった遺言書については、検認が不要だということになっています。
 
今回の相続法改正により、遺言書をご自身で作成する方が増えそうですね。
 
ただし、法務局が遺言書を保管してくれるといっても、遺言書の記載内容をチェックしてくれるわけではありません。
あとで疑義が生じないよう、遺言書を作成された際には、弁護士に確認をされることをお勧めします。
遺言書、相続に関するご相談は、石川県金沢市の弁護士、棒田法律事務所にご相談下さい。

遺言書は全て手書きじゃなくてもよい

遺言書には、いくつかの作成方式がありますが、多く利用されるのが、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」です。公正証書遺言は公証人に作成してもらう遺言で、自筆証書遺言は、自分で書く遺言のことです。

自筆証書遺言のことを、以下では「遺言書」と呼びます。

これまで遺言書は、全文を直筆で作成する必要がありました。パソコンやワープロで作成することや、家族に代筆してもらうことも認められません。

ところが、相続法が改正され、遺言書の一部をパソコンで作成することが認められるようになりました。
直筆ではなくても認められるのは、遺言書の財産目録部分です。
例えば、

 1 土地
   所 在  金沢市***
   地 番  **番**
   地 目  宅地
   地 籍  **.**㎡
    ︙
 2 預金
   **銀行**支店 普通 ********
    ︙

 

 

 

 

 

 

この部分をパソコンで作成することができるのです。かつては、これを手書きしなければいかなかったのですから大変ですね。

ただし、パソコンなどで作成した財産目録には全ページに署名・押印をしなければなりません。

その他、遺言書には、内容の訂正方法に関する細かいルールもあるうえ、記載内容が有効かどうか、遺言者の考えを忠実に反映した記載になっているかどうか、などなど、難しい点が多数あります。

当事務所では、遺言書の作成をお手伝いしております。公正証書遺言をご希望の方もお任せ下さい。
遺言書の作成や相続に関するご相談は、石川県金沢市の弁護士、棒田法律事務所にご相談ください。

相続放棄(3か月以内という期限)

 相続放棄の手続きは,戸籍等の資料を集めて,家庭裁判所に申立てを行わなければなりません。
 
相続放棄ができる期限は,相続開始を知ったとき(亡くなったのを知ったとき)から3か月以内と定められています。
 
亡くなったのを知ったときから3か月を経過してしまったら,絶対に相続放棄はできないかというと,そうではありません。

 3か月以内に手続きを行わなかったのが,相続財産が全く存在しないと信じたためであって,かつ,このように信ずるについて相当な理由がある場合には,3か月が過ぎていても相続放棄ができます。

 私も,カードローン会社から督促の通知が来て,初めて故人に借金があることがわかったという方につき,亡くなられてから3か月を経過後に相続放棄の手続きをとったことがあります。
 無事に相続放棄ができ,カードローン会社に証明書を提示して,債務の負担を免れることができました。

 3か月が過ぎてしまっていても直ちに諦めずに,まずは一刻も早く弁護士に相談されることをお勧めします。

 相続放棄や相続・遺産分割などのご相談は、石川県金沢市の弁護士、棒田法律事務所にご相談ください。

顔も知らない相続人へのお手紙

ご相談の内容
相談者は、高齢の兄の介護をしながら実家で同居生活をしていたところ、兄が亡くなり、自宅不動産の相続手続を行うことになった。
ところが、相続人を調査したところ、相談者には知らされていなかった兄弟の存在が明らかになった。当該兄弟はすでに亡くなっていたが、その子どもたちが相続人となるため、子どもたちとの間で遺産分割協議を行う必要がある。
しかし、相談者は彼らと全く面識や交流もなく、どのように協議してよいのか相談があった。

対応と結果
故人と全く交流がなかった相続人らは、そもそも自分が相続人であるとの認識もなかった。
故人との関係や遺産の内容を丁寧に説明したうえで、自宅不動産を相続して今後も自宅で生活したいという当方の意向を伝えたところ、預金の一部を代償金として支払うことを条件に、相続人の方々からご了解が得られた。
その結果、遺産分割協議書を作成し、相談者が自宅不動産の名義を取得することができた。

ポイント
親交のない相続人との間でどのように遺産分割協議をしてよいのか悩まれる方も多いと思います。
いきなり遺産分割調停を申し立てることもできますが、できれば、事情を丁寧にご説明することにより、調停を行うことなく早期に協議をまとめることができればと思っています。
遺言・相続・遺産問題のご相談は、石川県金沢市の弁護士、棒田法律事務所にご相談ください。