小規模個人再生のスケジュール(返済時期)

小規模個人再生は,返済しなければいけない債務を少なくしたうえで3年間で分割返済するという手続です。

裁判所に小規模個人再生の申立てを行った場合,実際に分割返済を始めるのは「いつ」になるでしょうか。
「いつから返済を始めることになりますか」というご質問はよくあります。

東京地裁などでは「標準スケジュール」が定められています。
それによれば,再生計画の認可・不認可決定までが25週間だそうです。約6か月くらいですね。

金沢地裁では,東京地裁の「標準スケジュール」のようなものは公表されていないと思います。
実際には,どれくらいの期間なのでしょうか。

私が最近やった小規模個人再生事件では,申立てから認可決定まで約5か月でした。東京地裁の標準スケジュールよりも少しだけ早く進んだわけです。
ただし,これは特に補正もなく,スムーズに進行した事件です。
事案によってはもう少し時間がかかる場合もあるだろうと思います。

その後,再生計画に基づく第1回目の支払い(3か月分)が,認可決定の4か月後くらいでした。

なので,裁判所に申立てを行ってから,約9か月後に最初の返済時期が来たことになります。ご依頼を受けてから裁判所に申立てを行うまで2か月ほどかかりましたので,ご依頼を受けてから約11か月です。

つまり1年弱です。

この1年弱の間は,弁護士が介入して,それまで行ってきた借金の返済をストップしているので,その分だけお金を貯めることができます。

「貯めることができる」というより,貯めなければなりません。

返済をストップしている1年弱の間に,きちんとお金を貯められる方(安定した収入・倹約・家計簿の記録など)でなければ,個人再生による債務整理はできないだろうと思います。

借金問題で悩んでいる方の中には「破産だけは避けたいから」という理由で再生手続を希望される方もいますが,「本当に破産を避けることができるか」を慎重に検討すべきです。

再生が困難となって結局は破産せざるを得くなることがあります。

逆に「借金の返済さえストップできればきちんとお金を貯められる」という方であれば,1年弱が経った頃にはある程度のお金が溜まっており,余裕を持って返済していけます。

 

債務整理をしたいけど,どっちの手続きがいいのかな…という方は,是非お近くの弁護士にご相談されて下さい。
依頼するかどうかはともかく,方針が決まれば,いろいろな準備を進めることもできますし,少しは不安が解消されると思いますよ。

年間の破産件数

借金問題のご相談で,たまに「何となく自己破産をするのが怖い」とおっしゃる方がいます。
「友人や知り合いが自己破産をしたなんて話も聞いたことがない。」
「何か大変なことになる気がして踏み出せない…。」

その気持ちよくわかります。
私も弁護士をしていなければ同じ感覚だったと思います。

自己破産や個人再生など債務整理は,無理にするものではありません。
「何となくイヤだからやりたくない」それでいいのだと思います。
私としても強くお勧めしたりはしません。

ただ,「何となく怖い」「何となくイヤ」という気持ちの源が,「どんなものかよくわからない。知らない。」という不安にあるのだとすれば,
丁寧に説明して差し上げれば解消されるかもしれない…と思っています。

さて,自己破産をする人ってどれくらいの人数だと思いますか。

令和元年の司法統計では,個人の自己破産は年間で約7万3000件です。法人も含めると約8万件。

1日にあたりに換算すると,1日200件。
1日に約200人が自己破産しているのです。

さらに,個人再生も年間約1万3000件あります。

離婚件数が年間20万件くらいですから,その半分弱ぐらいです。離婚歴がある知人や友達は,一人や二人ぐらいはいませんか?

そう考えると,自己破産や個人再生なんて,そこまで珍しいことではないっていう気がしませんか?

 

自己破産や債務整理についての不安があれば,どうぞ率直に弁護士にお話しください。
「確かにそれは心配ですね。」っていうこともあれば,
「その点については,心配ありませんよ。」っていうこともありますからね。

 

私は「盲腸の手術」や「親知らずの抜歯」の方が,よっぽど怖いです。

破産における税金

破産した場合の税金について追加のメモ

先日,税金などは免責を受けても無くならないという話をしましたが,
税金って何?どういうものが当てはまるの?ということについてメモしておきます。

破産法253条1項1号は,非免責債権として「租税等の請求権」を挙げています。

「租税等の請求権」とは何か。もちろんちゃんと定義が規定されています。
破産法97条4号です。
「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権(以下「租税等の請求権」という。)」となっています。

したがって,国や自治体に対する債務であっても,これに該当しない場合には,免責の効力を受けるということになります。

国や自治体に対して支払う税金っぽい債務があった場合には,その根拠となる法律を調べて,「国税徴収の例による」などと規定されているかどうかをチェックすることになります。

しかし,このチェックが大変です。「国税徴収の例による」という規定がポンっとは出てきてくれません。

例えば,国民健康保険料を例にしてみます。

国民健康保険法79条の2「市町村が徴収する保険料その他この法律の規定による徴収金は、地方自治法第二百三十一条の三第三項に規定する法律で定める歳入とする。」

地方自治法231条の3第3項「普通地方公共団体の長は、(略)当該歳入並びに当該歳入に係る前項の手数料及び延滞金について、地方税の滞納処分の例により処分することができる。」

地方税法331条6項「…(略)市町村民税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については、国税徴収法に規定する滞納処分の例による。」

という風に法令を辿ってようやく「国税徴収法に規定する滞納処分の例による。」に出会えるのです。
 
…とても面倒です ^ ^
 

ということで,国民健康保険の保険料は,免責の効力を受けないので破産しても支払わなければならない,となります。
(ただし,減免制度などがあります)

なお,このテーマでよく言及されるのが,上下水道の料金です。
下水道使用料は非免責債権になりますが,水道料金は免責なのです。

この手の話は確認しても忘れてしまうので,毎回ややこしいなぁと思ってしまいます。

借金問題や債務整理(任意整理・破産・再生)のご相談で,ここまで質問を受けることは,ほとんどありませんし,
気になった場合にも専門書籍でサラっと調べてしまえば済みますが,今日は少し意地になって調べてしまいました。

 

いずれにしても,借金問題で税金を滞納せざるを得ない場合には,早急に債務整理(任意整理・破産・再生)を弁護士に相談することをお勧めします。

税金等の滞納処分は,迅速かつ広範囲に容赦なく行われますので,切羽詰まってからでは身動きがとれなくなってしまいます。

破産における会社の税金

先日,「税金は破産しても消えないよ」,「カードローンなどの借金返済を優先して税金を滞納するのは止めた方がいい」という話をしました。

しかし会社の破産はそうではありません。

会社は破産するとなくなってしまいます。
税金を払う主体の会社そのものが無くなってしまうのですから(会社法471条),破産しても税金の滞納が残るということはありません。

会社の税金を,代表者が支払わなければならないということも,原則としてありません(合名会社などは例外)。

ですから,資金繰りに苦しんだ会社が,仕入代金や従業員の給料の支払いをせずに,税金だけ払うというのはダメです。

じゃぁ税金は一番後回しでいいのかと言われると,そうとも言えません。
税金の滞納が倒産の引き金になるということは,よくあります。

借金問題で債務整理(任意整理・破産・再生)をお考えの方は,早急に弁護士にご相談されることをお勧めします。

破産における税金や健康保険料

コロナウイルスのワクチン接種に行って来ました(LINEで予約できました)。
1回目ということもあるのか、今のところ熱や痛みなどの副反応は感じません。
ワクチンは無料で摂取でき、私の場合は健康保険証を提示することもありませんでした。

ちなみに債務整理のご相談の中で、「実は何年も健康保険証を持っていない(保険料を払っていない)のです。」というお話を聞くことがあります。

借金問題で悩む方の中には,カードローンなどの返済を優先して、健康保険料や住民税などの税金を滞納してしまう方がいますが、これらは自己破産をしても消えません。
自己破産によりカードローンなどの借金を消しつつ、保険料については市役所に相談に行って分割納付や免除などの相談をするしかありません。

「借金問題で生活が苦しくて健康保険料や税金などが払えない」という状態の場合は、
早急に債務整理(破産・個人再生・任意整理など)を弁護士に依頼した方がいいだろうと思います。

破産をしてもなくならない債務(免責の効力が及ばない債務)は他にもあります。
破産法253条1項に規定されています。

第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七 罰金等の請求権