取引履歴

債務整理のご依頼を受けた場合,貸金業者に対して受任通知を送付しますが,その際に「取引履歴を私に送って下さい」と要請する場合があります。

取引履歴には,いつ,いくら借りた(返済した)のか,という履歴が記載されています。
要するに銀行の預金通帳に書かれている内容と同じです。

債務整理の中でも,特に自己破産では,この取引履歴をよくチェックして,借金がどのように増えていったのか,いつ頃まで返済していたのかを確認することになります。

開示を受けた取引履歴を見ていると,いろんな場面が思い浮かんだりします。

例えば
「毎月の給料日に1万円ずつ頑張って返済してきたんだな。まじめな方なんだなぁ。」とか,
「この頃はお子さんもまだ小さかったはずだし,大変だったろうなぁ」とか,
「これだけ頑張って返済しているのに,利息が高くて元本が全然減っていない…悔しいなぁ」という感じで,
いろんな感情が巻き起こってしまいます。

それが過払いになっていた場合には,やっぱり腹立たしい気持ちになります。

依頼者が「借りたものは返さなければいけない」って一生懸命に働いて,家計から絞り出して払っていた返済金。それが実は払わなくてもいいお金だったということ。

貸金業者なんだから,わかっていたはずじゃないですか?
過払金が発生するような高い利率による返済を,平気で受け取っていたんですか?
払わなくてもいいお金だということを知っていながら,知らんぷりして毎月返済を受け取っていたんですか?

深夜,事務所で一人,取引履歴を見ていると,こんな風に燃え上がって,
「過払金は絶対に回収するからな!!」と奮い立つことがあります。

住宅資金特別条項

債務整理の手段として,破産を避け,小規模個人再生手続を選択する大きな理由として,「自宅を守れるから」ということがあります。

破産手続では自宅を手放さなければならないが,小規模個人再生では自宅を手放さずに済むというわけです。

ただし注意しなければいけないのは,破産手続でも自宅を守れる場合もあるし,逆に小規模個人再生でも自宅を手放さなければいけない場合もあるということです。

ざっくりご説明します(いろいろな例外がありますが,それは一旦おきます)。

そもそも,どうして破産手続だと「自宅を手放すことになる」と言われるのでしょうか。

破産手続では,原則として借金の返済を全て(生活費の支払いは除く)ストップすることになります。
なぜかというと,破産する人の財産を債権者に公平に分配する必要があるからです。一部の債権者にだけ返済することは認められません。

ですから,例えばローンが残っている自動車を使用している場合,ローンの支払いを停止しなければいけないので,自動車が引き揚げられてしまいます。
住宅ローンも同じです。住宅ローンの支払いも停止しなければいけないので,自宅は競売になってしまいます。だから自宅は手放さなければいけない,ということなのです。
(破産手続を選択した場合でも,自宅を守ることができる場合があります。それはまた別の機会にご説明します。)

実は,同様のことは,再生手続でも起きます。

個人再生手続では,借金の返済(生活費の支払いは除く)をストップさせたうえで,金額を減額した再生計画(つまりは返済計画)を作成し,裁判所のOKが出れば,その計画どおりに,債権者に対して公平に返済をしていくことになります。
再生計画(つまり返済計画)では,一部の借金だけは全額返済するという特別扱いはできません。

そうすると,住宅ローンの債権者(銀行など)は,「再生計画ではローンの一部しか支払ってもらえないから,自宅を競売して回収します。」ということができてしまいます。

これが原則,これが出発点です。

ところが,小規模個人再生における再生計画では,借金のうち,住宅ローンだけは特別扱いができるのです。

それが「住宅資金特別条項」です。
再生計画に,住宅ローンを特別扱いする条項を設けます。これを「住宅資金特別条項」と呼ぶのです。

「他の借金は減額して一部だけを分割して支払います。でも住宅ローンは,今までどおり支払います。ちゃんと支払っているのだから競売はされませんし,自宅を手放さなくていいよね。」ということです。

住宅ローンを特別扱いするという「住宅資金特別条項」は,どんなときでも認められるかというとそうではありません。

細かな条件があります。

例えば,自分が住んでいる住宅でないとダメだとか,住宅ローンの連帯保証人ではダメだとか,住宅ローン以外の抵当権がついている場合はダメだとか,税金の滞納処分の差押えがされている場合はどうだとか…。

状況によって,ダメだったり,ダメじゃなかったりします。

ですので,住宅ローン契約の名義,不動産の名義,抵当権の名義,抵当権の設定状況などなどの細かな事実を確認して,
住宅資金特別条項が使えるのか否かを,慎重に検討しなければいけません。

住宅資金特別条項が使えるのか否か(つまり自宅も守れるのかどうか)は,言うまでもなく,とても大事な分岐点です。
「ちょっと調べさせて下さい」と申し上げることはよくあります。

ですので,最初に書いた部分ですが「破産手続では自宅を手放さなければならないが,小規模個人再生では自宅を手放さずに済む」と簡単に考えてはダメです。

ネットで調べるのもいいですが,できるだけ早く,弁護士に相談してみることをお勧めします。

自己破産で日常生活は変わるのか

破産手続に対する不安としてよくご質問を受けるのが
「自己破産をすると仕事はクビになりますか」
「住んでいるアパートから引っ越さなければいけませんか」
というご質問です。

答えは,いずれも「そんなことありません」です。

自己破産をしても,基本的には会社にはバレません。
会社からお金を借りたりしていない限り,裁判所などから通知が行くことはありませんし,官報を毎日チェックするような特殊な職場でなければ,従業員が破産したことに気が付きません。
仮にバレたとしても,クビにはできません。

住んでいるアパートもそのままです。
家賃を多額滞納していない限り,大家さんは,入居者が破産したことに気が付きません。仮にバレたとしても,出て行かなければいけないなんてことにはなりません。

自己破産をしても,毎日の生活が大きく変わることは基本的にはありません。

それまでと大きく変わるのは,借金の返済をストップすることと(借金の督促もストップします),きちんと収支を管理する(家計簿をつける)ことぐらいでしょう。

破産手続(自己破産)のスケジュール

先日,小規模個人再生手続のスケジュールについて少し書きました。
→小規模個人再生のスケジュール

今日は破産手続(自己破産)のスケジュールについて書きたいと思います。

破産手続にはバリエーションが多く(審尋が行われるか否か,破産管財人が就くか否か,配当があるか否かなど),
それに応じてスケジュールも全然違ってきます。
下記はあくまで,とてもスムーズに終わったある破産事件(金沢地裁)のスケジュールということになります。

概ねこんな感じでした(同時廃止事件)。

[スタート]
受任通知(弁護士が各債権者に通知を発送)
↓ 2~3か月後
破産申立て(裁判所に書類提出)
↓ 2週間~1か月
裁判所が破産手続の開始を決定・手続の廃止を決定
↓ 約2か月後
免責決定(全ての手続が終了)
[ゴール]

スタートから半年ぐらいで全ての手続が終了していますね。

半年というのを早いと感じますか?それとも遅いと感じますか?

ちなみに,この半年間は常にいろいろな作業・手続を行っているというわけではなく,いわゆる「待ち」の時間が多いです。
書類の準備など,ご本人に協力を頂くのは,受任通知から破産申立てまでの約2~3か月間がほとんどです。

管財事件でスムーズに終わった事件は,こんな感じでした。

[スタート]
受任通知(弁護士が各債権者に通知を発送)
↓ 3か月後
破産申立て(裁判所に書類提出)
↓ 2週間
開始決定・同時廃止決定
↓ 約3~4か月後
免責決定(全ての手続が終了)
[ゴール]

半年よりちょっと長めですが,同時廃止の場合とあまり変わりませんね。

 

スムーズにいってもこれくらい時間がかかります。
もっと時間がかかる事件も普通にあります。

手続に時間はかかりますが,少しずつでも前には進んでいきます。そして必ず終わります。

長い人生です。何年も何年も借金返済に追われることを考えれば,この半年はわずかな時間だとは思いませんか。

債務整理(借金問題),自己破産,再生手続についてご相談をご希望の方は,ぜひ一度,棒田法律事務所にお問い合わせください(相談料は無料です。)。

信用情報(ブラックリスト)

債務整理・破産・再生などを検討されている方で,「ブラックリストに載ってしまう…」と心配されている方がいます。

弁護士的には,そこまで恐れる必要はないのでは…と思いますが,確かに「ブラックリスト」って言葉の響きがすでに怖いですよね。
「一生消えない傷」を負ってしまうのでは…と不安に思う気持ちもよくわかります。

多くの方から質問を受けるので,ブラックリスト,つまり「信用情報」についてメモしておきます。

経済産業大臣が指定する「信用情報登録機関」には,CICとJICCと全銀協(KSCと呼ぶらしいです)があります。

3つそれぞれが別の機関ですが,実際にはこの3団体は,相互に情報を提供し合っています(CRINという制度だそうです)。

金融機関やカード会社における審査の際に,この信用情報登録機関に照会をかけて,滞納はないか?とチェックされるわけです。

まず,任意整理の場合であっても,破産や再生手続であっても,信用情報には登録されます。いわゆるブラックリストに載ってしまうということです。

ですので,債務整理手続きを開始した後は,新しいローンを組んだりすることが難しくなります。

では,登録された情報(ブラックリスト)はいつ消えるのか?

「5年」と言われたり「10年」と言われたりするようですが,各信用情報登録機関がホームページで公表しているオフィシャルな情報で確認してみました。

→ 情報の種類や契約時期によってもかなり細かく決められています。
詳細をお知りになりたい方は,各団体のホームページを直接ご確認下さい。

ざっくり言えば,多くの情報は5年で消えます。

例えば「ローンを滞納した」などの情報は5年で消えます。
ただし,返済し終わってから5年です。

破産の場合には,免責の決定が確定したことをローン会社に伝えると「完済」と登録され,完済から5年で消えるということのようです。

では,破産手続が終わってから5年経てば全ての情報が消えるのかというと,そうではないようです。

全銀協だけは「官報情報」を10年保管するとしています。
(CICは,平成21年4月1日から官報情報の収集・保有を中止しているとのことです。)

官報とは,政府が発行している新聞のようなもので,破産や再生に関する決定が掲載されています。
(ただし,日刊新聞のようにコンビニで買えたりはしません。大きな書店でなければ売っていませんし,一般の方が目にすることはほとんどないと思います。)

破産や再生の手続を行う場合,この官報に必ず載ります。

全銀協は,官報に掲載された情報を10年保管しているということは,「誰がいつ破産(再生)した」という情報を10年保管しているということになります。

結局のところ「破産や再生をした場合は10年経たないと信用情報は消えないのか…」ということでしょうかね。

 

最後に,借金問題で悩んでいるけれど,「ブラックリストに載りたくないから債務整理をしない」という選択は考えられるでしょうか。

任意整理をすれば,例えば5年で完済し,完済後5年で情報が消える(つまり消えるまで10年)。破産でも10年。

では,債務整理することなくそのまま返済する場合,直ちに全額を返済できれば,完済から5年で消えますので,これが一番早いですね。

しかし完済まで5年かかった場合は,結局は消えるまで10年かかってしまうことになります。
ただし,そのまま返済する場合は,高額のリボ払い手数料や利息も支払わなければなりません。
この状態のまま5年で返済できる方であれば,任意整理をすればもっと早く返済できるはずです。

結論としては,「ブラックリストに載りたくないから債務整理をしない」という選択は「ナシ」だと思います。

一刻も早く債務整理をして,生活を立て直し,貯金をした方がいいと私は思います。