遺言書には、いくつかの作り方(方式)がありますが、多く利用されるのは、公証人に作成してもらう公正証書遺言と、自分で書く自筆証書遺言です。
この記事では、自筆証書遺言の書き方のルールと、2020年に始まった法務局の遺言書保管制度、公正証書遺言との違いについて説明します。
自筆証書遺言の基本のルール
自筆証書遺言は、次の要件を満たさなければ無効になります(民法968条1項)。
- 全文を自分で手書きする(パソコンでの作成や、家族による代筆は認められません)
- 日付を手書きする(「令和○年○月吉日」のように、日付が特定できない書き方は無効とされています)
- 氏名を手書きする
- 押印する
財産目録はパソコンで作ってもよい
以前は、財産の一覧(財産目録)も含めて、すべてを手書きしなければなりませんでした。2019年1月から、財産目録の部分は手書きでなくてもよいことになりました(民法968条2項)。
たとえば、次のような部分です。
1 土地
所 在 金沢市***
地 番 **番**
地 目 宅地
地 積 **.**㎡
2 預金
**銀行**支店 普通 *******
この部分は、パソコンで作成したり、登記事項証明書や通帳のコピーを添付したりすることができます。
ただし、手書きでない財産目録には、すべてのページに署名と押印が必要です(両面に記載がある場合は両面とも)。また、「誰に何を相続させるか」という本文は、これまでどおり手書きが必要です。
書き間違えたときの直し方
遺言書の内容を訂正するときにも、厳格なルールがあります。訂正した場所を示し、訂正した旨を書き添えて署名し、訂正した場所に押印しなければなりません(民法968条3項)。方式を守らない訂正は、効力が認められません。
訂正が多くなる場合は、新しく書き直すほうが安全です。
法務局の遺言書保管制度
自分で書いた遺言書は、自宅で保管すると、紛失したり、書き換えられたり、亡くなった後に見つけてもらえなかったりするおそれがあります。
そこで2020年7月10日から、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度が始まりました。
保管制度のメリット
- 家庭裁判所の検認が不要になる
- 原本と画像データが法務局で保管されるので、紛失や改ざんのおそれがない
- 亡くなった後、相続人などが全国の法務局で、遺言書が保管されているかを調べたり、内容の証明書(遺言書情報証明書)を受け取ったりできる
- あらかじめ申し出ておけば、亡くなったことが法務局に伝わった際に、指定した人へ遺言書が保管されていることを知らせてもらえる
手数料は、遺言書1通につき3,900円です。
「検認」とは
自宅などで保管していた自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所で検認という手続きを受けなければなりません(民法1004条)。相続人を戸籍で調べ、家庭裁判所に申し立て、期日に出頭するといった手順が必要で、すぐには相続登記や預金の解約などができません。
私はこれまで、遺言書を作りたいというご相談には、できるだけ公正証書遺言をお勧めしてきました。その理由の一つが、検認が不要であることでした。保管制度を使えば、自筆証書遺言でも検認が不要になります。
保管制度の注意点
- 遺言者本人が法務局に出向いて申請する必要があります(代理人による申請はできません)
- A4サイズ・片面のみ・決められた余白をとる・封をしないなど、用紙の様式が決まっています
- 法務局が確認するのは形式面だけで、内容が有効か、思いどおりに財産を分けられる内容かはチェックしてもらえません
自筆証書遺言と公正証書遺言の比較
| 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
|---|---|---|
| 作る人 | 本人が手書き(財産目録を除く) | 公証人 |
| 費用 | ほぼかからない(保管制度は3,900円) | 財産の額などに応じた公証人の手数料 |
| 証人 | 不要 | 2人必要 |
| 検認 | 必要(保管制度を使えば不要) | 不要 |
| 内容のチェック | なし | 公証人が関与する |
手軽さでは自筆証書遺言、確実さでは公正証書遺言に分があります。財産の種類が多い場合や、相続人の間で争いになりそうな場合には、公正証書遺言をお勧めします。
遺言書を作る前にご相談ください
遺言書は、書き方を少し誤っただけで無効になったり、意図と違う意味に読まれて争いの原因になったりすることがあります。遺言者が亡くなった後に、書き直すことはできません。
当事務所では、自筆証書遺言の内容の確認や、公正証書遺言の作成のお手伝いをしております。
よくある質問
Q. 遺言書をパソコンで作ってもいいですか?
A. 自筆証書遺言の本文は、すべて手書きする必要があります。パソコンで作成できるのは財産目録の部分だけで、その場合も各ページに署名と押印が必要です。
Q. 法務局に預ければ、家庭裁判所の検認は不要ですか?
A. はい。法務局の遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言は、検認が不要です。
Q. 法務局は、遺言書の内容が正しいかチェックしてくれますか?
A. いいえ。法務局が確認するのは様式などの形式面だけで、内容が有効か、思いどおりの分け方になっているかは確認されません。内容に不安がある場合は、弁護士にご相談ください。
遺言書の作成や相続に関するご相談は、石川県金沢市の棒田法律事務所にご相談ください。初回の相談料は無料です。
