破産における税金

破産した場合の税金について追加のメモ

先日,税金などは免責を受けても無くならないという話をしましたが,
税金って何?どういうものが当てはまるの?ということについてメモしておきます。

破産法253条1項1号は,非免責債権として「租税等の請求権」を挙げています。

「租税等の請求権」とは何か。もちろんちゃんと定義が規定されています。
破産法97条4号です。
「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権(以下「租税等の請求権」という。)」となっています。

したがって,国や自治体に対する債務であっても,これに該当しない場合には,免責の効力を受けるということになります。

国や自治体に対して支払う税金っぽい債務があった場合には,その根拠となる法律を調べて,「国税徴収の例による」などと規定されているかどうかをチェックすることになります。

しかし,このチェックが大変です。「国税徴収の例による」という規定がポンっとは出てきてくれません。

例えば,国民健康保険料を例にしてみます。

国民健康保険法79条の2「市町村が徴収する保険料その他この法律の規定による徴収金は、地方自治法第二百三十一条の三第三項に規定する法律で定める歳入とする。」

地方自治法231条の3第3項「普通地方公共団体の長は、(略)当該歳入並びに当該歳入に係る前項の手数料及び延滞金について、地方税の滞納処分の例により処分することができる。」

地方税法331条6項「…(略)市町村民税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については、国税徴収法に規定する滞納処分の例による。」

という風に法令を辿ってようやく「国税徴収法に規定する滞納処分の例による。」に出会えるのです。
 
…とても面倒です ^ ^
 

ということで,国民健康保険の保険料は,免責の効力を受けないので破産しても支払わなければならない,となります。
(ただし,減免制度などがあります)

なお,このテーマでよく言及されるのが,上下水道の料金です。
下水道使用料は非免責債権になりますが,水道料金は免責なのです。

この手の話は確認しても忘れてしまうので,毎回ややこしいなぁと思ってしまいます。

借金問題や債務整理(任意整理・破産・再生)のご相談で,ここまで質問を受けることは,ほとんどありませんし,
気になった場合にも専門書籍でサラっと調べてしまえば済みますが,今日は少し意地になって調べてしまいました。

 

いずれにしても,借金問題で税金を滞納せざるを得ない場合には,早急に債務整理(任意整理・破産・再生)を弁護士に相談することをお勧めします。

税金等の滞納処分は,迅速かつ広範囲に容赦なく行われますので,切羽詰まってからでは身動きがとれなくなってしまいます。

破産における会社の税金

先日,「税金は破産しても消えないよ」,「カードローンなどの借金返済を優先して税金を滞納するのは止めた方がいい」という話をしました。

しかし会社の破産はそうではありません。

会社は破産するとなくなってしまいます。
税金を払う主体の会社そのものが無くなってしまうのですから(会社法471条),破産しても税金の滞納が残るということはありません。

会社の税金を,代表者が支払わなければならないということも,原則としてありません(合名会社などは例外)。

ですから,資金繰りに苦しんだ会社が,仕入代金や従業員の給料の支払いをせずに,税金だけ払うというのはダメです。

じゃぁ税金は一番後回しでいいのかと言われると,そうとも言えません。
税金の滞納が倒産の引き金になるということは,よくあります。

借金問題で債務整理(任意整理・破産・再生)をお考えの方は,早急に弁護士にご相談されることをお勧めします。

破産における税金や健康保険料

コロナウイルスのワクチン接種に行って来ました(LINEで予約できました)。
1回目ということもあるのか、今のところ熱や痛みなどの副反応は感じません。
ワクチンは無料で摂取でき、私の場合は健康保険証を提示することもありませんでした。

ちなみに債務整理のご相談の中で、「実は何年も健康保険証を持っていない(保険料を払っていない)のです。」というお話を聞くことがあります。

借金問題で悩む方の中には,カードローンなどの返済を優先して、健康保険料や住民税などの税金を滞納してしまう方がいますが、これらは自己破産をしても消えません。
自己破産によりカードローンなどの借金を消しつつ、保険料については市役所に相談に行って分割納付や免除などの相談をするしかありません。

「借金問題で生活が苦しくて健康保険料や税金などが払えない」という状態の場合は、
早急に債務整理(破産・個人再生・任意整理など)を弁護士に依頼した方がいいだろうと思います。

破産をしてもなくならない債務(免責の効力が及ばない債務)は他にもあります。
破産法253条1項に規定されています。

第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七 罰金等の請求権