任意整理とは、弁護士が貸金業者と個別に交渉し、毎月の返済額を減額する方法です。
多くの場合、将来利息をカットしたうえで、返済期間ができるだけ長くなるよう交渉し、債務者にとっての負担を減らします。「できれば自己破産はしたくない」「何とかして借金は返済したい」というときに、借金の額や今後の収入の見込みなどを勘案しながら、任意整理を行います。
1 利息のカット
⑴ 将来利息
任意整理のメリットは「利息をカット」してもらえることです。
そのままの返済だと、高い利息がついて、払っても払っても元金が減らないという場合があります。
任意整理では、返済終了までの利息(これを「将来利息」と呼んだりします)を免除してもらえるよう交渉します。
利息をカットしてもらえれば、現時点で残っている金額だけを返済するということになります。
支払った額がそのまま元金の返済に充当されます。
⑵ 必ず利息がカットされるとは限らない
かつてはどの金融業者も利息のカットに応じてくれていました。ところが、最近いくつかの業者が利息のカットに応じないという対応をとっています。それも「15%」といった高い利息を要求してくるのです。
このような業者を相手の交渉は難航します。
私はこれまでの任意整理の交渉では、原則として、将来利息を付ける(利息をカットしない)という和解をしません。
なぜなら、利息のカットは任意整理の最大(唯一)のメリットであり、「利息がカットされないのであれば、任意整理の意味がない」と言えるからです。
私は、将来利息をカットしないという貸金業者の対応には問題があると思っています。
[詳しくは…]
任意整理の処理については、日本弁護士連合会が「多重債務者任意整理に関する全国統一基準」を作成・公表しています。
この基準では「最終取引日における残元本を確定すること」や「将来利息は付さないこと」が明記されています。
この基準は2000年に日本弁護士連合会で採択され、その後は、全国的な統一基準として運用され、貸金業者のほとんどがこれに応じてきた結果、いわば法慣習・法規範となったと評価できる合理的な基準なのです。
この統一基準に基づく和解案に応じて頂けない貸金業者に対し、各地の弁護士会が「統一基準の遵守を求める声明」を発出しているほか、全国クレサラ・生活再建問題対策協議会も「任意整理の統一基準に応じない貸金業者に対し、あらゆる法的手段を駆使し徹底的に闘うことを確認する決議」を行っています。また、内閣に設置された多重債務者対策本部の懇談会(第20回・2022年12月20日)においても、統一基準に基づく任意整理に応じない貸金業者の問題が取り上げられ、出席した金融庁担当者が、財務局及び都道府県と連携して適切に指導・監督する旨述べています。
2 長期分割
任意整理では長期分割での支払いを求めて交渉します。
「長期」とはどの程度かという点ですが、多くの貸金業者が少なくとも60回(5年)程度の分割に応じてくれます。
72回(6年)や84回(7年)の分割に応じてもらえる場合もありますが、
60回以上の分割には決して応じない貸金業者や、60回ですら応じてくれない貸金業者もあります。
また「契約期間と同程度の返済期間」という条件を要求してくる貸金業者もあります。
例えば、借入と返済を3年間ほど繰り返してきた方の場合には、任意整理でも残りの借金を3年で返済するよう求められる場合があるということです。
貸金業者によって、応じてもらえる返済条件はバラバラです。
債務者の個別事情も影響します。
3 一部だけ任意整理
任意整理は、一部の債務だけを対象に行うことができます。
例えば、利息が高いA社からの借り入れについて任意整理をするが、もともと返済額が少ないB社については任意整理をしない(これまで通りの返済を継続する)ということが可能です。
これは自己破産や個人再生などの手続との大きな違いです。
キャッシングについては任意整理をするが、自動車のローンはそのまま支払うことにより、ローン付きの自動車を手元に残すということも可能です。
4 よくある誤解
⑴ 信用情報(ブラック)
「任意整理ではブラックにならない」というのは誤解です。任意整理でも信用情報に「延滞」などの情報が記録されますので、いわゆる「ブラック」の状態となり、新たに借り入れをしたりすることが困難になります。
信用情報の記録が消えるのは、返済が終了から5年後です。
例えば、任意整理をして60回払い(5年)の和解をしたとすれば、信用情報が消されるのは10年後ということになります。
なお、自己破産の場合は、破産手続が終了したときから5年で信用情報が消えます。
多くの方が半年程度で破産手続が終了しますので、5年半で消えるということになります。
つまり、任意整理よりも自己破産の方が信用情報は早く消えます。
⑵ 借金が減る?
任意整理で借金が減るかと言われれば、確かに将来利息はカットしてもらえることが多いので、そのまま返済するよりも、返済総額は減ることになります。
ただし、元金は減っていません。
任意整理において元金の減額に応じてくれる貸金業者がいないからです。
「借金減額措置」「返済免除」というキーワードで広告を行って任意整理を勧めてくる弁護士・司法書士事務所があります。
減額や免除されるのは「利息」です。
⑶ 過払金
過払金が生じていれば借金が減ります(減るように見えます)。
過払金とは「払いすぎたお金」「返済しすぎたお金」です。
かつて、貸金業者が今よりも更に高い利息をとっていた時代がありました。
正しい利率で計算をしなおすと、すでに借金は完済していて、むしろ払い過ぎているという場合があったのです。
この払い過ぎたお金が「過払金」と呼ばれるものです。
払いすぎたお金ですから返してもらえますし、
他に借金があれば、過払金がその返済に充当され、過払金の分だけ借金が減るということになります。
しかし、このような事案は、現在においてほとんどありません。
多くの貸金業者が2008年(平成20年)頃までに、高すぎた利率を正しいものに変更しており、その後は過払金が生じていないからです。
5 最も大切なこと
任意整理をする際に最も大切なことは、「本当に任意整理でよいのか」ということです。
ご説明したとおり、任意整理では借金(元金)は減りません。利息はカットしてもらえることが多いですが、元金全額を返済することになるのです。
借金を全て免除する自己破産や、借金を5分の1程度まで減額できる個人再生と比べると、
任意整理は圧倒的に不利です。メリットが小さいです。
信用情報(ブラック)の点でも、多くの場合、自己破産や個人再生の方が早く信用情報が消えます。
任意整理を行って、例えば5年(60回)の分割払いという条件で和解しようとする場合、
確実に5年間の返済を継続できるのか考えなければいけません。
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