債務整理の手段として,破産を避け,小規模個人再生手続を選択する大きな理由として,「自宅を守れるから」ということがあります。
破産手続では自宅を手放さなければならないが,小規模個人再生では自宅を手放さずに済むというわけです。
ただし注意しなければいけないのは,破産手続でも自宅を守れる場合もあるし,逆に小規模個人再生でも自宅を手放さなければいけない場合もあるということです。
ざっくりご説明します(いろいろな例外がありますが,それは一旦おきます)。
そもそも,どうして破産手続だと「自宅を手放すことになる」と言われるのでしょうか。
破産手続では,原則として借金の返済を全て(生活費の支払いは除く)ストップすることになります。
なぜかというと,破産する人の財産を債権者に公平に分配する必要があるからです。一部の債権者にだけ返済することは認められません。
ですから,例えばローンが残っている自動車を使用している場合,ローンの支払いを停止しなければいけないので,自動車が引き揚げられてしまいます。
住宅ローンも同じです。住宅ローンの支払いも停止しなければいけないので,自宅は競売になってしまいます。だから自宅は手放さなければいけない,ということなのです。
(破産手続を選択した場合でも,自宅を守ることができる場合があります。それはまた別の機会にご説明します。)
実は,同様のことは,再生手続でも起きます。
個人再生手続では,借金の返済(生活費の支払いは除く)をストップさせたうえで,金額を減額した再生計画(つまりは返済計画)を作成し,裁判所のOKが出れば,その計画どおりに,債権者に対して公平に返済をしていくことになります。
再生計画(つまり返済計画)では,一部の借金だけは全額返済するという特別扱いはできません。
そうすると,住宅ローンの債権者(銀行など)は,「再生計画ではローンの一部しか支払ってもらえないから,自宅を競売して回収します。」ということができてしまいます。
これが原則,これが出発点です。
ところが,小規模個人再生における再生計画では,借金のうち,住宅ローンだけは特別扱いができるのです。
それが「住宅資金特別条項」です。
再生計画に,住宅ローンを特別扱いする条項を設けます。これを「住宅資金特別条項」と呼ぶのです。
「他の借金は減額して一部だけを分割して支払います。でも住宅ローンは,今までどおり支払います。ちゃんと支払っているのだから競売はされませんし,自宅を手放さなくていいよね。」ということです。
住宅ローンを特別扱いするという「住宅資金特別条項」は,どんなときでも認められるかというとそうではありません。
細かな条件があります。
例えば,自分が住んでいる住宅でないとダメだとか,住宅ローンの連帯保証人ではダメだとか,住宅ローン以外の抵当権がついている場合はダメだとか,税金の滞納処分の差押えがされている場合はどうだとか…。
状況によって,ダメだったり,ダメじゃなかったりします。
ですので,住宅ローン契約の名義,不動産の名義,抵当権の名義,抵当権の設定状況などなどの細かな事実を確認して,
住宅資金特別条項が使えるのか否かを,慎重に検討しなければいけません。
住宅資金特別条項が使えるのか否か(つまり自宅も守れるのかどうか)は,言うまでもなく,とても大事な分岐点です。
「ちょっと調べさせて下さい」と申し上げることはよくあります。
ですので,最初に書いた部分ですが「破産手続では自宅を手放さなければならないが,小規模個人再生では自宅を手放さずに済む」と簡単に考えてはダメです。
ネットで調べるのもいいですが,できるだけ早く,弁護士に相談してみることをお勧めします。